昨今のコンテンツにより一人で、ゆるりと楽しむキャンプが流行りを見せる中、人知れず廃れていくキャンプ場もあります。
川沿いにバンガローが並び、いかにもキャンプ場、といった風の建物のの並びは昔の話。このキャンプ場に存在したほとんどの建物が劣化と共につぶされています。
数年前にまだスマホのカメラで撮っていた時はもう少し原型をとどめていたと記憶しています。人間の作るものの何と脆いことか。
キャンプ場事務室。置き去りの神棚。
廃墟の残留物の中でも時計とカレンダーは特に好きです。いつその廃墟が人間の手を離れたかわかるからです。年号と最後にめくられたページをみては、ああ、もうそんなに経っているのか、と悲しい気持ちになるのです。
開けっ放しの事務室二階。からっ風が吹き込んでとても寒い。そう長くはもたないでしょう。
大宴会場と思われる離れ。もてあそばれた畳の変形二次元平面はれっきとした風湿害による自然の劣化です。
この大宴会場には場に似合わずいたるところに有名絵画の贋作が飾られています。
「晩鐘」「笛を吹く少年」。集会所さながらのチープな建物の畳張りの部屋に突如現れる装飾過度な額縁を持つ絵画はなんとも異様。この片田舎のキャンプ場のコンセプトを理解するにはもう少し人生経験が必要です。
宴会場を出て外を散策。タコの形をした遊具がありました。
遊具の穴から見る川面こそがこのキャンプ場に最もふさわしいと思うのです。
最奥地に進むとバンガローとも小屋ともつかぬ小さな宿泊施設がズラリ。どれも植物の侵食を受けています。中を覗くと二段ベッドが兵舎さながら押し込まれていました。廃れた理由が分からなくもありません。
結果的に廃道となった敷地内の道路。奥には小屋の死屍累々。標識も明後日の方向を向いています。
それなりに大きな通りに入口が面していますから、通る人が通ればわかるこのキャンプ場。
次行こうかなと思った時にはきっと建物は全部ぺしゃんこになっていて、私が訪れることはもう二度ないのでしょう。