シーサイドは安気海つ路の雲を見るか?

青いシニヨン少女さながらの二輪車旅。寄りたいところがあるんだよね、と言う先輩が運転する車についていったらこんな街に連れていかれました。

通りにせり出す民宿の看板が宿場町っぽい雰囲気を醸しています。でもここは宿場町というよりかは温泉街。街に着く前の標識には地名と共に温泉の接尾辞が付いていました。

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ガラス越しに何かを捌くおじさんの姿が見えました。看板にはくすりと掲げてはおりますがその実態は海産物直売店みたい。中は生簀でぎっしりでした。

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過去の経験からこういう街には主道路から伸びる細道が点在していると知っているのです。その先にありとあらゆる旅館や民家が存在していて、それぞれの生活を営んでいます。さながら幹から伸びる枝葉の先に色づく葉っぱが付いているかのように。

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ちょっとした坂の頂点の上には雲と空ばかり。この道の先は海だということを予感させる風景です。こんな場面は昔海水浴場に連れて行ってもらった時の高揚を思い出します。泳ぐ前のビーチに向かう道はいつもこんな風景でした。

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広い空と揺蕩う雲、均整な岩と穏やかな海。先輩はこの岩の合間に見える富士山を見せたかったようですが生憎この日は見えませんでした。そんな日もありますよ、と月並みな言葉をかけましたが不思議とがっかりはしていませんでした。

 

釣り好きの先輩はあの岩の上に船で行って釣っている釣り人が気になるようでした。釣りをしたことはないですが、周りを海に囲まれた岩のてっぺんに乗る秘密基地感といいますか、湧き出る高揚感は知っています。

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海に流れる川の水門の上から、街の構造が良く見えました。これで街のあちこちから湯けむりが上っていれば情緒たっぷりなのでしょうがこの場所はそうでもないみたい。でもここは風光明媚な海沿いの温泉街なのです。

 

 


秋田の銀山温泉や長野の渋温泉を見たことはありますか?どうして温泉街は街の真ん中に川が流れていてそれをまたぐように橋が架かっているのでしょうね?排水の関係でしょうか。

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でも今は知らなくていいのです。きっとこれから先数多の温泉地を巡り、きっとその答えが見つかることでしょう。世間で経験値やセンスや場数と言われている類のものはそういうものだと思います。

 

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収集時刻の見えなくなったサビサビ縦型郵便ポスト。昔読んだ小説で収集時刻が貼られているポストは現役だ、という話を聞いたのですがこのポストは曖昧なところです。表示は海風で錆びて消えていますがその風貌はキリっとしていて若いもんには負けんという気概が感じられます。

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これから長い人生の中で沢山の温泉地を巡ることかと思います。しかし、身体は一つで費用や時間も限られます。日本各地の温泉地全てを訪れることなどできはしないのです。二度と泊まることなどないこの場所を記憶にとどめるようにしようと決心し、この場所を後にしたのでした。

 

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