植物学の父の思いは山の頂点に。

例えば貴方にとって日本一の飲食店はどこですか?と聞かれたら返答に困ることでしょう。そもそも何をもってして日本一なのか。味なのか値段なのか雰囲気なのか。それでも日本一を決めてくださいと言われたら悩んだ末にどこかの店を挙げることでしょう。学生時代お世話になったあの店。至高の一杯を出すラーメン屋。今は無いけれどあの空間が好きだった喫茶店

植物園にも同じことが言えます。日本一何てそうそう決められるものではありません。蘭を見るんだったらあの植物園。広さではあの植物園が一番ですし、庭園の美しさではあの植物園に勝るところはそうそうないなぁ、といった風に。

それでもこの植物園だけはやっぱり日本一なのです。植物分類学の父と言われた牧野富太郎博士の名を冠した植物園です。

正門から入った瞬間にありとあらゆる草にラベルがついています。本当にありとあらゆるなのです。入口からして他の植物園とは別格の風格が漂います。

植物を保存、展示する施設としても申し分ないのですが、それを魅せる施設としても一級品です。常に手入れがされているし、成育が第一に考えられながらも、庭園としてもバランスが取れていて非常に美しい。細部にちりばめられた造園の妙が光ります。

牧野氏の功績をたたえる博物館としても機能しています。それを展示するこの建物も円形のモダンな建築でかっこいい。

氏の生涯はこのブログの片隅に語ることのできるものでは到底ありません。訪れた際は是非彼の志の一端に触れてみてください。

併設カフェ。とてもおしゃれ。散歩がてらの老夫婦や中高年グループ、子連れファミリーでにぎわっております。一人でもそもそカレーを食べているのは私だけです。

小高い山の上に建てられたこの植物園は遠くの街が一望できます。公園としての役割をも果たしているのです。

そしてなんといってもこの温室。

建物と樹木の融合。素晴らしいデザインです。

入口から見上げたところ。植物園の学術的なイメージを払拭させる、まるで美術館にでも来ているかのような演出です。

エントランス。

カーブを描いた屋根がかっこいい。この日はしとしと雨が降っていましたが温室の中では関係ありません。ポカポカ年中暖かいのです。

ガリバナの花手水。

 

植物に囲まれる空間。なんとも非日常な体験です。

趣味として語られるアクアリウムというのは水世界の箱庭を作る、といったものなのでしょうか。アクアリウムをやったことはないですがその箱庭に入ることができたらとても素敵なことでしょう。

地面から見るだけでなく、上からも見学ができるようにしてある温室はいい温室です。

なんてったって葉っぱというのは太陽に向けられたものなのですから。太陽からの視点で楽しまなければ。

上からの視点だけではありません。これはハスの葉が浮かぶ池なのですが

ガラス越しに葉の裏を見ることができるのです。葉が浮かぶ仕組みが知れますね。こういう創意工夫は近年人気を馳せる水族館にも通じるところがあります。

評価基準が多くある中で一番を決めるのはとても難しいことです。それでもここは数ある植物園を見てきた中でも一番だと思いました。

植物を育てているだけでなく、それを魅せて楽しむ施設として。植物分類学の父の彼の名に恥じないと深く深く思ったからです。