遠い遠い海の街。主要都市に旅行に行ってもどうにも行くところが無くて、ちょっと離れたこの地域にやってきました。駅の改札から歩けるペデストリアンデッキからはなんとも現実味のない風景が一望できます。
軍港の街だったあって、今でも灰色のお船が沢山泊まっています。
それ以外に目を引くのは赤と白が派手でとても目立つこのクレーン群でしょうか。
非現実的な大きさのタンカーが泊まっていましたから、コンテナの積み降ろしに使っていて今でも現役のクレーンたちなのでしょう。
そしてこちらは本来の役目を終えて陸に揚げられた潜水艦。
中は博物館になっていて、戦中の歴史や海軍の仕組みが本物の展示物と共に分かりやすく示されています。これは電話線が埋まっているから気をつけろポスターに似てるなーと思って撮った写真。時代を感じる一枚。
特筆すべきは潜水艦の中も見られることです。先日、ドイツの映画「U・ボート」を見てその緊張感あふれる狭い潜水艦内を想像していたら思ったよりは快適そうでビックリしました。おっと、艦内は撮影禁止ですよ。
外に出て閉館時間が迫るころには辺りはオレンジ色に染まりかけておりました。
海の方へ歩きます。岸辺は公園となっていて、老夫婦、カップル、子供づれ。様々な人たちが散歩を楽しんでおりました。
公園内の一部は木製デッキとなっていてこれはかの戦艦大和の甲板を表現しているらしいのです。東洋一の軍艦という割には小さな船体だと感じたのをよく覚えています。
それともここが沈む心配も飛行機が飛来する心配もなく優雅に歩いていられる場所だからでしょうか。
先日「U・ボート」を見たと言いましたが実はもう一つ、戦中の映画を見ていました。それはまさにこの地に住む主婦を主人公にした、ゆったりとしていて悲しく、それでいてやりきれなくなる淡々とした日常を描く物語です。
山のふもとにある彼女の生きたモデルの家の場所を訪れようとも考えたのですが、公共交通機関で行くにはこの時間ではあまりに遠く、泣く泣く海から眺めているにとどめました。
アニメの映像の中で見た海の風景とはまるで異なります。こんなに現代的でないのは当たり前ですし、80年近くもの時を経ているのです。でも日暮れの穏やかな時の流れや遠くの山の風景、どうにも現実味の帯びない船やクレーンが並ぶ様は同じ場所だったのだなぁと実感させられます。
リアリティの無いこの風景がどうにも私には彼らが首長竜のように見えて仕方がありませんでした。
作中では爆撃を受けて焼け野原となっていたこの場所も機械仕掛けの生物たちが生息する湾岸の街として深く深く印象に残っています。
さっきまで明るかった辺りが晩陽となり彼らの影がありありと残る時間になりました。
そして先ほどまで見ていた潜水艦の愛称は「てつのくじら館」。この街になんともふさわしい異名です。彼は動かなくなった今も首長竜を見つめて陸の上に立っています。
とっぷりと日が落ちた後に見た駅標に日本語的韻を踏んだ独り言を思い浮かばずにはいられなかったのです。