京よき日は晴天なり。

今私がこの文章を書いているのは鎌倉の「ホテルニューカマクラ」の一室。駅から徒歩2分ほどの好立地。鎌倉自体は中学の修学旅行以来の訪問です。鎌倉というと関東圏の中でも屈指の観光地。本来ならばこのようなブログで書くようなところではありませんし、好…

大多喜また来て小江戸街。

一度行った場所には滅多に再訪しない旅ばかりをしてきた人間なのですが、どういう気持ちの変化か、最近はそういうことも悪くないと思い始めてきました。 「定番」「いつもの」といった言葉が心の平穏や安心、喜びをもたらすように、一度行った場所ならば落ち…

濡れた温泉街道をまた征く。

いつかの日に来た温泉街道。今回は二輪車を捨て、電車でえっちらおっちら来てみました。 この日はなんだか台風が近づき天気が悪くなりそうとの予報があったので、いつもなら跨っている相棒には乗らず、鉄道で。とはいうものの夏の空はカラッとした晴天です。…

人と史、相極まる林の中にて。

海辺に近いとある神社。道路沿いに口を開ける面妖な鳥居に目を引かれ、一度通り過ぎたものの、引き返してまじまじと眺めておりました。 注目する原因となったのはその鳥居を囲む樹木林。ほかの神社にはあまり見られない不思議な様相を呈しています。多くの鎮…

七夕坂に関する一介の人間の伝聞。

ひたすら北へ進んでいます。霞ケ浦を抜け、大洗の街を目もくれず通り過ぎ、ひたすら真っすぐな道を進んでいました。 2024年の5月の例大祭で頒布された同人CD、「七夕坂夢幻能」。同好の間では「秘封」の名で知れ渡っております。東方projectを手掛けるZUN氏…

空と海とのあいだに。

私は海をほとんど見ずにここまで生きてまいりました。 いわゆる海なし県の出身です。海のある都道府県に住む人でも湾岸や島にでも住まない限り、まあそれほど頻繁に海を見る機会などはあまりないでしょうが、当時の私は成人するまでに5本の指を折れるか折れ…

願わくば 花の咲く程 知り死なむ。

我々は生きている内に一体どれだけの美味しいものを食べておいしかったといい、本や映画を鑑賞していい作品だったと言えるでしょう。おそらく何十年もの間に数え切れないほどそういった感動があるに違いありません。 しかし春の風物詩ともいえる桜を見る回数…

鈍き黒鉄無色の白煙。

雪降る日。たしかどこかの神社の参拝のついでだった気がします。知らない街に来て、次の電車の時間まで暇だったので辺りをぐるっと回ってみようかという思いで歩き出した時のことでした。そこそこ積もった雪の中、思うように進まないキャリーバッグを引きず…

かつての能登のことノート。

この街へ来たのは2022年10月。私にしては珍しく、友人達3人と旅行の過程として訪れた時のことでした。 前日は能登半島の東側にある七尾の温泉街に宿をとり、この日はレンタカーでわいわいおしゃべりしながらドライブをしておりました。 昨日までのどんより雲…

石の意思と空廃墟。

さくさくと冬枯れの落ち葉を雪を漕ぐように歩く。道なき道の斜面には乾いた木の葉で覆われ、登るときは靴に絡みつき、下るときにはソールを滑らせてきます。どうしてそんなとこを歩くことになったのか、写真を撮っていたのにもかかわらずあまり覚えておりま…

昼なお暗けれどアーケード。

お店に入らなくても、黒猫のように歩くだけでも楽しめるアーケード散策。あまり人に話しても魅力が伝わらない隠れた魅力があります。 とはいうものの、派手な看板が並ぶが地元密着の商店街や扉の奥から歌声や紫煙が漂うバー通りは場違いなような気がして歩き…

廃校の褪せゆく二色にもう一色。

あれほど元気だった植物たちが段々と色彩と体積を減らし、葉を落としていく秋。そんな草木を纏うちょっとした小高い丘の上に小さな小さな廃校があります。 それなりに広い校庭と年季を思わせる壁面の板と、整然と並んだ窓ガラス。昭和の時代を生きた校舎とい…

迷い惑わせ夏神社。

夏真っ盛りの8月中旬のこと。どこまでも続く青い青い田んぼの中にひときわ目立つ赤い鳥居がてん、てん、てん、と立っています。 正面に立ってみると参道が続く二つの鳥居と、すぐ近くに手水が据えられているものが一つ。まずは手を清めることとします。 残り…

一献が甘口辛口為す文化。

一口にお酒といっても好みは様々。まずはビール、やっぱりワイン、南の人間ならば焼酎…人によっては目がない物やちょっと苦手なお酒もあることでしょう(私も焼酎が飲めません)。その中でもお米から作られる日本酒というものは大好きな人と苦手な人の差が激…

暗闇の宙に浮かぶ、夢の島。

人と遊びに行くとなり、水族館と動物園どちらがいいと聞かれたらあなたは何と答えますか?異性とロマンチックな雰囲気を過ごすなら水族館もいいですし、家族で普段見られない動物と触れ合える動物園も捨てがたいですね。 ですが第三の選択肢として植物園があ…

鉄路と道路の渚にて。

初夏の六月。週末は天気が良いという予報が出ていたので趣向を変えて電車に乗って旅をしてみることにしました。 いつもは二輪車に乗って目的地を決め、それらを周りきったら帰るという、ある意味窮屈な旅をしています。でも今回はどこに行くのか知らないあい…

寡黙な鯨とお洒落な首長竜の街。

遠い遠い海の街。主要都市に旅行に行ってもどうにも行くところが無くて、ちょっと離れたこの地域にやってきました。駅の改札から歩けるペデストリアンデッキからはなんとも現実味のない風景が一望できます。 軍港の街だったあって、今でも灰色のお船が沢山泊…

征く人咲く花、枯れ廃村。

舗装されているのだかされていないのだかよくわからない道を延々数キロ。住む人のいなくなった廃村を訪れていました。集落のしょっぱなから崩れかけた廃屋が建っていてここが廃村であるということを思い知らされます。 手入れをほどこせば修繕をすればまだま…

倍々旅路でバイバイ・モラトリアム。

いつも一人旅をしていると時たま誰かと行く旅行はどんなものだったっけ?と忘れてしまうことがあります。修学旅行や家族旅行で経験しているはずなのに、一人旅の時の自由な時間に肩まで浸かっているとその喧騒や楽しさをとんと覚えていないのです。 そんな時…

歩みは進めど、筆は進まず。

三月上旬までにどうしても完成させなければならない文章がありまして。文豪のような気分になれると聞き、ここで書き上げるぞという気持ちと、もうどうにでもなーれという気持ちとの半々にこの地にやってきました。 ここはかつての文人たちが泊まった愛したと…

傾く日差しと鉄の箱。

一口に廃れるモノといっても種類は様々で、廃墟、廃屋、廃校、廃醫院…かつての用途において細分化が為されているようです。その分類に則るならば廃線というものは私の最も好きな「廃」の一つであります。 山の上につながるケーブルカーが使われなくなった今…

朽ちてなお見らるる廃醫院。

棚の奥にしまわれた新品の手帳がカビていく様より使い込まれ、革が鞣された手帳の方が味があるのと同様に、ただの廃屋よりも何かしらの仕事をしていた廃墟の方が魅力的であります。 ここはかつての産婦人科医院。今は朽ちて荒らされるに任せ、崩壊の一途を辿…

植物学の父の思いは山の頂点に。

例えば貴方にとって日本一の飲食店はどこですか?と聞かれたら返答に困ることでしょう。そもそも何をもってして日本一なのか。味なのか値段なのか雰囲気なのか。それでも日本一を決めてくださいと言われたら悩んだ末にどこかの店を挙げることでしょう。学生…

忘れがたきウミガメの味。

知らない街の知らない道。たまたま通りかかったそんな風景を歩きます。 たまたま、とはいうもののなんだか歴史のありそうな古い町並みが見えたから、というのが本音です。 明らかに現代の家屋の造りとは異なる家々が並んでいます。きっと昔は何かの産業で栄…

北の軸のその果てに。

北の国の商店街。普段住んでいる場所から見れば、北の果てとも言える土地の、何の変哲もない普通の通りを歩きます。霧のような雨が降っていてカメラのレンズが濡れると思いつつもその雰囲気を楽しみつつ、先に進みます。 車で通ったとしてもどこにでもあるア…

ヒールを脱いで深夜登山。

ひっそりと静まり返った石畳と通り。ここは東京でも随一の登山観光地として名をはせています。 休日の昼間ともなれば登山者数日本一のハイキングコースとして有名なこの場所は老若男女の人でごった返します。 しかし夜中ともなれば街灯が煩く光るばかりで人…

燃える石は鉄路と政策に揺られて。

木々が広がる森の中、忘れられたように廃駅跡が残っています。ここはかつて森林資源や石炭を運びたすために建設された路線の開業当初の終着駅でした。 入口はこのあぜ道。 その六角形の看板はこの道が立派な都道府県道であることを示しています。 どう見ても…

科学世紀のカフェテラスの制作物。

この度は2022年9月11日に京都パルスプラザで開催される科学世紀のカフェテラスにて二冊の本を頒布させていただいております。 【女13】【イツトモエ廃温室】 秘封の二人が散歩以上旅未満の活動をしながら綴る、随筆風イラスト写真集となる予定です。道端の何…

ワニとソテツと温室と。

コウモリが鳥類と哺乳類の中間だといわれるように、動物園と植物園の中間のような施設がここにあります。(地名)+(名物の植物)+(名物の動物)で構成されたその施設の名前は自分がコウモリであることを自覚しているかのようです。 入園しょっぱなからワ…

月草のうつろふ家屋と軒の下。

海が見える廃道に今にもつぶれそうな廃屋がありました。季節は初夏。辺りは緑が生き生きとしだし、使われていないアスファルトや屋根を覆おうとする時期です。昔は伝染病の隔離病棟であったこの施設も正に今自然に還ろうとしています。 病棟の周りをちょっと…