ワニとソテツと温室と。

コウモリが鳥類と哺乳類の中間だといわれるように、動物園と植物園の中間のような施設がここにあります。(地名)+(名物の植物)+(名物の動物)で構成されたその施設の名前は自分がコウモリであることを自覚しているかのようです。

入園しょっぱなからワニの大群がお出迎え。円形のドーム屋根からぽかぽかの日差しを浴びて気持ちよさそうに生活する数種類のワニたちが見学できます。淡水魚も見られるゾーンもありますよ。

記念メダルを作る機械。施設の年季を体現している古さが代金とチープな商品をもって体感できます。こんな機械もいつまで動いているのでしょうね。

ワニと散水魚のゾーンを抜けたら道路を渡って植物園です。この施設はワニ園、植物園などを有する本園と、レッサーパンダをはじめとする動物や熱帯果樹園を有する分園に分かれており、本園と分園はマイクロバスで3分の地点に位置しています。本園の中だけでも道路を隔てて温室が作られているので非常に複雑な構造をしているのがこの施設の特徴です。地図は必須ですよ。

 

この扉の先が緑で埋まる入口こそ植物園に来たなぁと感じさせる風景です。

狭い通路にひしめく植物。千と千尋の養豚場に向かう花の生垣を思い出します。

シダ植物の温室です。普段森の地面でしか見られないような植物が部屋の一面に生き生きとしている姿は新鮮です。

この施設の名物の一つに人魚といわれる動物がいるのですが生憎下にもぐって顔を見せてはくれませんでした。

標本展示室と謳われた部屋の中にも彼らのぬいぐるみだけが並べられています。これはこれでかわいいので欲しい。

湯煙を吹き出す温泉櫓。群馬は草津しかり、北海道は函館しかり、温泉地に植物園が多い理由をご存知ですか?温室を温めるのに温泉の熱を利用できるからです。大地の恩恵をあずかることができるのは何も動物界の生物だけではないのです。

次は食虫植物温室です。どこの植物園にもある食虫植物ゾーンですが、それぞれの園で展示の方法や成育状態が違って差異が見えるのが面白いところです。

ここの食虫植物ゾーンはこれでもかと埋め尽くすスタイル。自分が一介の虫ならば生きては出られません。

ブロメリア温室。

視線を感じる…

洋ラン温室。ランは多くの人々を魅了する魅惑の植物です。

ここから先はエレベーターに乗って上の温室に参ります。緑に覆われたすてきな入口。

エレベーターを上がった先からはこの町を一望できます。もちろん先ほどまで居たワニ園なんかも。湯煙やローカル線、小さな食堂が見えるのが海沿いの田舎町という風情満載です。

斜面に建てられている施設ですから温室と温室の間に長い階段があります。

上がった先は観葉植物温室。珍しい植物や変な名前の植物がいっぱいです。友達やカップルで来てもワイワイ楽しめるはず。

今日はとてもいい天気。

熱帯スイレン温室。余談ですがスイレンとハスは違う植物です。

本園最奥の温室は原種ランとオオオニバスの温室です。さながらラスボスが控える大広間のような空間は最後に控える部屋として相応しいものです。

原種ランをこれでもかと栽培しているこの空間…エンディング後のスタッフロール感というか解放されたギャラリー感ないですか…?ない…そうですか…

今来た道を戻ります。

道中にはこの園の昔の写真が飾られていました。オオオニバスの温室を見て昔よりハスの葉が減っている気がしたのは気のせいではないようです。

エレベーターのドアもよくみると植物柄。なんだか時代を感じさせる菊模様です。それがいい。

順路的には本園最後の部屋となるヒスイカズラ室。この施設で最も好きな部屋です。訪れたのは5月の中旬。垂れ下がる花が部屋中を覆っていて素敵な空間となっていました。

マイクロバスに乗って分園へ。ゆっくりしていってね!!!

分園の見どころはレッサーパンダです。

広めの檻の中でのびのびと見られる彼らが見られます。立ちはしませんでしたけれど。

個人的に推したいのがこのソテツの温室です。ワシントン条約により移動が制限されているソテツは植物園で見られる植物としてとても貴重なものになっています。そんなソテツがこれだけの大きさと量で育てられている場所はここの施設だけではないでしょうか。

他にはない魅力であるソテツをもっと前面に出していけばいいのに…とは思いますが一般人が見て面白い植物ではないのかも。

代わりに宣伝筆頭として使われているのがこのバナナです。

園内で収穫したバナナがフルーツパーラーにて食べることができます。…けっこういいお値段してました。

おおそうか…

やはり見ていて面白い植物とはこういうものをいうのでしょう。その形状が赤いカエルに見えることから名前が付いた、とかトリビアを見てへぇ~となることとか。

普段食べている食品の原料がこんな風に成長していくのだなぁと見学することとか。

動物園や植物園の楽しみ方は人それぞれです。かわいい動物たちを見たいという人もいれば学術的に貴重な植物の見学に訪れる人もいます。

私は緑が一面に広がる温室の中で過ごすのがいいなぁと思いますし、ちょっとずつボロくなった建物を見て哀愁を感じるのも好きなのです。

その海の見えるロケーションと年季の入った建物は訪れたことが無い人でも懐かしさを感じさせてくれるはずです。たっぷりの高揚感と子供の頃の遠足にも似る旅情と、ほんの少しの寂しさを是非体感してみてください。