平たい顔族の愛する旅館は意匠深く。

某県某市、山奥の高原のそのまた奥にこんこんと温泉の湧く旅館があります。

12月も中旬で途中の道路は一部凍結していました。ノーマルタイヤじゃとてもじゃないけど危なくて行けません。駐車場から旅館までの約400メートルの歩道もカチコチです。

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この旅館の魅力は何と言ってもその複雑怪奇な内部の構造にあります。旅館のご主人が最初旅館内を事細かに説明してくれます。最初はそんなの探検してるうちにわかるから…と思っていましたが、飲めない水の水道があったり、混浴のお風呂に男性専用の時間があったり。決まり事すら複雑なのですからその構造は言わずもがな。

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それほど長くはない廊下も上へ下へと縦横無尽に駆け巡っています。写真じゃわかりにくいですがそれこそアスレチック遊具のようです。

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手すりの下にはもうもうと湯気の立つ温泉が流れています。室内だというのに。温泉の流れている剥き出しの石造りの壁などから元からあった建物に増改築を増やした跡が垣間見えます。

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おそらくこの旅館で最も代表的な温泉。硫黄の匂いが一面に立ち込めています。立派な髭と鼻の天狗が二体かかっていて、いかにも男湯!といった風情ですが、22時までは男性専用でそれ以降は混浴です。

我々の界隈では天狗と言われれば少女を想像するというのはまた別の話。河童も吸血鬼も同様です。

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お風呂から出たらさっそく館内探検に参りましょう。

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休憩室。夜中トイレに起きてしまった時のおばあちゃん家感満載です。壁には漫画がいっぱい。

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真夜中の旅館探索の中で自販機の人工的な光は妙にホッとさせてくれます。

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旅館ロビー。当たり前ですが誰も居ない。調度品など面白そうなものがいっぱいあったけどこう暗くちゃ見えやしません。

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古い町の郵便局でみるアレ。本当に売っているのかは分かりませんでした。

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ストーブ。火は付いていません。

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廊下の途中の謎仏像。混沌としつつも内部の雰囲気と妙にマッチしているところが不思議です。

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下へと続く階段。建物の三か所に湯舟があるので全部入ろうと思ったら嫌でも館内を歩かされることになります。その探検しているワクワク感がたまりません。

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増改築の年代の違いからか、廊下が急に現代的な造りになったりします。誰も居ない絨毯の上をタパタパと自分のスリッパの音だけが響くのです。

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真夜中の探索において緑の誘導灯の光ほど、探索気分を高揚させてくれるものはありません。夜中に歩く背徳感、忍び込んでいるかのような罪悪感、子供のころ味わっていた冒険心、暗闇への恐怖…様々な感情が混ざり合った色をしています。

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さっき来た道では手で押し引きしていた扉が、急に自動ドアに変わっていたりするとそれだけでびっくりします。それほどこの館内の作りがごちゃごちゃだということでもあるのです。

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この上に上るのだけはやめておこう…そんな風に階段を下から眺めているだけの時もあります。旅から帰ってきて結局あの階段はなんだったのだろうと思い返すのもまた一興なのです。

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ここが最奥の露天風呂。温泉は24時間いつでも入っていいらしいですがあまりの寒さで衣服の脱ぎ着が億劫になってしまっています。明日入ろう…と思って帰りました。

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部屋に入るとき旅館の飼い猫が引き戸の隙間からするりと入ってきました。

カメラバッグの匂いを嗅いでいると思ったらバリバリ爪を立てていたので、こたつをつけて中に入っていてもらいました。

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なに撮ってるんだよ…みたいな顔で見てきます。

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翌日の明るくなったロビー。暗かった時間では見えなかった細部の意匠をじっくり見るのも朝の楽しみです。

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某彫りの深いローマ人が現代日本にタイムスリップする映画の撮影にも使われた本旅館。ロケでは確か外のプールも使われていた気がします。

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気に入った施設を見つけた時のコツは余さず全部楽しむのではなく、ちょっぴり消化不良で帰ることです。そうすれば次また来ようという意志と理由が生まれます。あのプールに入るのはお預けです。水着もありませんでしたしね。